近年閉店するインターネットカフェ・漫画喫茶が急増しており、今後もこの流れは止まらないのではないかと思われます。
理由は言わずもがな、新型コロナウイルスによる外出自粛の影響でしょう。
売り上げの中でも長期滞在者・宿泊客が占めていたインターネットカフェでは、旅行やイベント等での遠出が一切できなくなったため、安定して売上を出すことができなくなっています。
閉店するお店は増え、複合カフェ業界がやばいことはよく分かりますが、具体的にどれくらいヤバイのか知るために、大手ネカフェチェーン店の運営会社が出す決算報告から確認してみます。
今回は快活CLUBの親会社『AOKIホールディングス』と自遊空間の『株式会社ランシステム』のIR情報を一部引用します。
インターネットカフェ・漫画喫茶が閉店する理由
先ほども触れた通り、外出自粛による売上低下が1番の理由です。
複合カフェ業界最大手の快活CLUBは売上が約18%のマイナスで、グループ会社でも主力事業になり得るエンターテインメント事業でしたが、2020年は最も赤字額の大きい事業となりました。
売上高は352億64百万円(前年同期比18.3%減)、営業損失は55億17百万円(前年同期は営業利益16億92百万円)
この結果、グループ会社全体でも1270億→940億と売上が大きく減少しています。
複合カフェ業界のパイオニアであり、今でも店舗数は業界ナンバー2を誇る自遊空間では、前年約54%で3億円以上の赤字を出しています。
4月−5月の緊急事態宣言以降の売上高と客数の減少は著しく、前年比3−4割という大幅な売上の減少が見受けられます。
先行きの見えない社会情勢により、閉店を選ぶ店舗が増えるのは仕方がないことです。収束を願って赤字を垂れ流すよりも、いち早く撤退し被害を最小限に止める方が賢明かもしれません。
快活CLUBだけは店舗数が増えている
しかしながら、業界最大手の快活CLUBは他のチェーン店と異なり、エンタメ事業に投資を続けています。110億円の長期借入を追加し、さらに展開を続ける予定とのこと。閉店ラッシュによって既存のネカフェにとって代わる存在になるかもしれない、まさに分岐点とも言えるタイミングです。
店舗面では、快活CLUBで50店舗、FiT24で18店舗を新規出店した一方、営業効率改善のため9店舗を閉鎖した結果、当第3四半期末の店舗数は661店舗(前期末602店舗)となりました。
この逆風に次ぐ逆風で50店舗も新規出店するのは、ある種賭けともいえる経営方針ではないでしょうか。
この動きの背景を探るには、快活CLUBの親会社であるAOKIホールディングスを見る必要があります。
AOKIホールディングスが手掛ける3つの事業
AOKIホールディングスの主力事業はスーツの青木でお馴染みのファッション事業です。近年このファッション事業の売上が低下する一方で、快活CLUBを中心としたエンターテインメント事業の売上がグングンと成長していました。
2018年から2019年にかけて、ネカフェとカラオケをまとめてエンターテイメント事業に統合し、唯一売上が伸びている事業として力を入れ出したタイミングでした。
この辺りから首都圏に快活CLUBの出店が増え、元々は郊外に展開するという戦略を変え、新宿などの激戦区にもお店を構えるようになりました。
ここにきて2020年、まさかエンターテイメント事業が一番赤字を垂れ流す事業になるとは、誰も予想しなかったでしょう…。非常に厳しい現実です。
第45期第3四半期(2020年10月1日-2020年12月31日)
売上高 | 営業損失 | |
ファッション事業 | 531億48百万円 | 48億78百万円 |
ブライダル事業 | 53億29百万円 | 26億3百万円 |
エンターテイメント事業 | 352億64百万円 | 55億17百万円 |
ファッション事業:
売上高は531億48百万円(前年同期比18.6%減)
営業損失は48億78百万円(前年同期は営業損失19億40百万円)
ブライダル事業:
売上高は53億29百万円(前年同期比70.1%減)
営業損失は26億3百万円(前年同期は営業利益7億47百万円)
エンターテイメント事業:
売上高は352億64百万円(前年同期比18.3%減)
営業損失は55億17百万円(前年同期は営業利益16億92百万円)
複合カフェ業界が取る今後の戦略
大手複合カフェの2社は激動の2020年を経ても尚、現状の打開に向けて各社異なる新しい戦略を取っています。
まず2社ともに共通して行う新しい施策は、テレワークの需要増によるビジネス目的客の取り込みです。
快活CLUBは鍵付き個室でビデオ会議のしやすいブースを増やしたり、資格講座の動画コンテンツを配信するといった施策、自遊空間は外販事業を活かしたサテライトオフィス提供サービスを展開しています。
各社施策の内容こそ違うものの、方向性としてはビジネス層の利用者を増やすという点で、複合カフェ業界の流れは『テレワーク』が鍵を握っているのではないでしょうか。
共通の施策はまだあります。スタッフの負担を軽減し、業務効率の向上を図る「セルフ化店舗」を増やすという施策です。
決済や店舗の予約、入退店といった手続きは全て自動化することで、人件費削減やスムーズなサービス提供を実現します。
これによりスタッフは清掃や飲食物の提供に専念できるので、サービスの質も向上するのではないでしょうか。
快活CLUBは脱ネカフェを狙う
快活CLUBは複合カフェやインターネットカフェという業態に止まらず、大規模なエンターテイメント施設として様々な施策を打っています。
シェアリングスペースとしてテレワーカーを狙うかと思いきや、神ポテトや焼きカレーといったフードメニューでのヒットを狙ったり、「寺島文庫」オリジナル動画やスポーツ・チャンネルDAZN(ダゾーン)※コートダジュールを完備するなどの施策も行っています。
漫画・PCしかなかった漫画喫茶という業態に、ダーツやビリヤード、カラオケなどのアミューズメントを合体させた、かつての自遊空間を見てるようです。
自遊空間は外販事業とVtuberが命運を握る?
店舗の早期撤退によるコストマネージメントはもちろんですが、自遊空間ならではの施策が2つあります。
一つはシステム外販事業です。入退場ゲートや自動精算機などのシステム販売事業に力を入れ、ネカフェ以外での売上強化を図ります。
二つ目は公式Vtuberによる広報活動です。YouTube上で活動する架空のキャラクターで動画コンテンツを配信し、若年層へのアプローチを狙います。
MCとオタクトークが得意なバーチャルスタッフ🥳
VTuberとかアニメ漫画映画音楽その他が好きです✌✨◆◇YouTube◇◆https://t.co/4V7pJrPhXr
■□マシュマロ□■https://t.co/4PG96jOAFb pic.twitter.com/aYaC23jLeK
— ろさ@自遊空間 (@jiqoorosa) February 8, 2021
複合カフェ業界の今後の展望
以上が快活CLUBと自遊空間の現状と今後の戦略でした。
各社戦略は異なるものの、まだまだ複合カフェ業界の最前線として、新しい取り組みに挑戦していくことが予想されます。
個人的には、各社が狙うテレワーク・勉強といった娯楽以外での利用者は、そこまで増えないのではないかと予想しています。
理由として、私もテレワーカーとしてコワーキングスペースやシェアオフィス、カフェで仕事をすることがありますが、流石にネットカフェで仕事をしようとは思えません。やはり娯楽のイメージが強い上に、客層や衛生面での課題がまだまだ残っていると思います。
しかし、カプセルホテルや格安ビジネスホテルにとって代わる”コスパ最強の宿”という地位はまだ揺らいでないと思うので、旅行や遠出の機会が増えればまだまだネカフェに未来があると思っています。
外出ムードの緩和とイベントの頻度によって、複合カフェ業界の先行きはガラリと変わりそうですね。