「漫画喫茶・インターネットカフェってお店に漫画を置いて営業してるけど、きちんと出版社に許可を取ってるの?著作権侵害じゃない?」
と思った方も少なくありませんよね。
実はこの疑問、割と複雑で根が深い問題だったりします。なぜなら、漫画喫茶というビジネスモデルの特殊さが影響しているからです。
この記事では、漫画喫茶やインターネットカフェが著作権侵害ではないのかどうかをなるべく分かりやすく解説します。
漫画喫茶・インターネットカフェは著作権違反ではない?
著作権侵害をしているかどうか、と言われると現状は違法ではないです。ただし、著作権者は書籍等で貸し出しをしてビジネスをする権利を有しており、それを著作権法第26条の3の貸与権で明言しています。
著作権法第26条の3
「著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。」
漫画喫茶が漫画等の著作物でビジネスをしている側面がある以上、貸与権が適用されるかどうかが争点となります。適用された場合、著作者(作家や出版社など)に使用料を支払ったりして使用許諾を得なければいけません。
著作権法の改正
1984年に制定された著作権法の貸与権は、書籍・雑誌に関しては適用外としました。
しかし、近年のレンタルコミック店は書籍の売上に影響していることが明らかであるとされ、2005年に改正。書籍・雑誌にも貸与権が適用されるように。
法改正後はレンタルコミック店から使用料を徴収する仕組みを導入するべく、『日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合(CDVJ)』と交渉します。これが非常に難航して100回以上交渉した結果、2006年に無事完全同意で幕を閉じました。
しかしこれはあくまでも『レンタルコミック店の話』です。漫画喫茶・インターネットカフェはコミックの貸し出しを事業としているわけではないので、使用料を払う必要もありません。
「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」が反発
「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」は貸与権が適用されない漫画喫茶・ネットカフェ、いわゆる『複合カフェ』業態に対し、書籍・雑誌の売上に影響しているとして反発。
これを受けて2003年、日本複合カフェ協会は暫定合意という形で、「コミックス閲覧で得た対価の一部を漫画文化の発展のために還元する」と表明します。
「やけにあっさり話し合いが進んだな」と思われますが、日本複合カフェはTVゲームの上映兼許諾を得るために設立された背景もあり、コミックスの著作権関係もスムーズに話が進んだという側面があるようです。
とはいえ日本複合カフェ協会に加入していない漫画喫茶・インターネットカフェもたくさんあり、これらは貸与件に関して未だ何も解決していません。
小規模な漫画喫茶・インターネットカフェは、日本複合カフェ協会などのまとまった窓口となる管理団体がないため、交渉する機会がないという問題があります。
漫画・雑誌目的で来る人が多ければ貸与権適用も妥当
結論として、以下の2点から日本複合カフェ協会に加入していない漫画喫茶・インターネットカフェから使用料を徴収するのは難しそうです。
- 漫画喫茶やインターネットカフェが書籍関連の売上に影響を与えているかどうかを判断するのが難しい
- 各店舗と交渉する窓口となる管理団体がない
これらの理由から、今後もこの体制は変わらないと思います。
ただし僕個人的のケースで言うと、読みたい漫画があるときにネットカフェに行くので、新しく漫画を買う必要性をなくし、作家や出版社に行くはずだった売り上げはネットカフェへと流れています。
つまり、貸与権の適用は妥当だと判断しています。美容院や飲食店が漫画を置いているのとは訳が違いますからね。
ただ、ネットカフェには漫画以外にも、ゲームやドリンク、レジャーに仮眠・宿泊などの様々な目的で訪れるお客さんがいます。
漫画があろうとなかろうと来店する人がいる以上、漫画がサービスの中心と言えないため、貸与権の適用はやはり難しそうです。